刷毛作りを支える素材と道具 


檜(ヒノキ)

刷毛の外側部分の素材です。毛板を四方から囲って保護する役割があります。丈夫であることはもちろんですが、柔軟性があり加工しやすいことも重要なため、良質な檜材が求められます。
狐工房では木曽原生国有林 払下げの樹齢250年以上の檜を使用しています。専門の板やさんに丸太を目利き、買い付け、手割りしていただき、板やさんのもとで数年、そして会津に運んでさらに数年寝かせたのち使用しています。
"丸太買い"をしているので木のいろいろな表情の入った板が届きます。刷毛に使えない部分は道具に加工したり、端材、カンナ屑は希望する方にお分けしたり。檜は刷毛の毛板を囲んで保護するだけでなく、さまざまな人とのつながりもくれる大切な素材です。

 毛(人毛、馬毛)

漆刷毛に使用する毛は人毛と馬毛です。(狐の毛ではありません!)
漆を塗り広げるための適度なコシがあることから通常の塗刷毛には人毛が使用されます。十分な長さがあり、また人間が生きている限り入手し続けることのできる、持続可能で理にかなった優秀な材料であるとも言えます。しかし現在日本国内で安定的に良質な長い人毛を手に入れることは非常に難しく、狐工房では一般製品用に使用している人毛は全て中国から輸入しています。中国にはかつら産業のための巨大な毛の市場があり、長さや質を選んで購入することができます。しかし、中国の人毛も年々値上がりし手が届きにくくなってきているのが現実です。

摩耗の激しい作業に使用する銅摺刷毛や乾漆刷毛には、丈夫な馬毛を使用しています。馬毛には数種類あり、たてがみは比較的柔らかく、尻尾は硬いです。また色によっても硬さが異なり、白は柔らかく、黒いほど硬いです。これら数種類を刷毛ごとに使い分けます。
一本の刷毛に人毛と馬毛を両方使用する立交(たてまぜ)という漆刷毛もあります。
 

さまざまな刃物

手割りの板を効率よく加工するには手作業が向いています。ナタ、ノコギリ、カンナ、切り出し刀などを使って全て手作業で仕上げていきます。また、毛板の加工には布断ち包丁、断ちバサミ、革断ち包丁、竹割りナタなど、異業種の道具も活躍します。